「司会」

葬儀ナレーションの一例⑦

お父さんと再会できましたか?

私をこの世に送り出してくれて、ありがとう。
辛いことも、嬉しいことも、楽しいことも、悲しいことも、
生きているから経験できました・・・。
私を産んでくれて、ありがとう。お母さん。

二歳の時に戦争で、父を亡くしたお母さん・・・。
お父さんの記憶がない。
写真の中でしか、お父さんの顔を見たことがない。
一度だけ戦争から帰国した時に、抱かれたらしい。
それも覚えていないほど、小さなころの記憶。
お父さんが居る家庭っていいなぁ。憧れるなぁ・・・。
もし、お父さんが生きていたら、どんな人生になっていただろう?と、
79才になる老婆の母が、最近よく口にしました。
そう、お話をしてくださるお嬢様。

昭和15年10月○日、戦時中という時代に、この世に生を受けられた○○様。

子供の私から見ても、綺麗な母でした。
苦労をしているのに、そんなこと微塵も感じさせない母。
お店を切り盛りして、家族を支え、
朝早く、仕込みの支度から、店じまいまで、よく働く母。
どんなに忙しくても、ユーモアを忘れず、笑顔で誰からも好かれていた母。
そんな母が、私の自慢です。

お母さんが居てくれたから、私たちの命がある。
いつも優しい愛情をありがとう。
育ててくれて、ありがとう。
感謝の言葉は、伝えきれません・・・。

逢いたかったお父さんと再会できましたか?

今はどうか、ゆっくりお休みください・・・。

喪主様(娘様)からのお話を聞いていると「永遠のゼロ」を思い出しました。
現代を生きる私たちは戦争を知らず、映画やTV、本で見聞きしているだけです。お父さんの温もりや愛情を知らず逝く人生・・・。
兵士はこの町を歩いていないけれど、昭和初期の方々の戦争はまだ終わっていないのだと感じました。

 

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