「司会」

葬儀ナレーションの一例⑥

尺八の雄

お別れにあたるひと時のお時間でございますが、
故〇〇〇〇様は、「都山流日本尺八連盟 大師範 酒林延山」として、生涯を通して
尺八を学ぶ楽しさを教えてこられました。

ここにご門人一同様によります、〇〇〇を、献奏として捧げます。
しばし、美しい音色にお心をお寄せくださいませ。

~~~~~~~~ご門人一同様による献奏~~~~~~~~

『先ほどの、心のこもった演奏、ありがとう。』
お写真の〇〇様が、そうおっしゃった気がいたします。

昭和〇年〇月〇日、四人兄弟の長男として、
戦火激しい満州の地でこの世に生を受けられました。

終戦後、ご両親と幼いご兄弟と一緒に、貨物船に乗り込み日本に帰国。
「父は、日本の地に降りたった時、
改めて日本人であることに、誇りを感じたそうです。
畑を耕す土の匂いにさえも、『日本の良さを感じて、心が震えた。』と、
当時の話をしてくれました。」
そうおっしゃる息子様。

様々な日本の文化に触れる中、〇〇様は尺八の音色にめぐり合い人生の全てを捧げます。

謙虚で、温かいお人柄と心打つ音色には、
多くのご門人が、教えを乞うために訪れました。

指導にあたられる中で、
座右の銘とされていた言葉が、「日本文化の継承と、人との調和。」

そして、「都山流日本尺八連盟 大師範 酒林延山」として、
普及活動を行ってこられました。

「美しい音色を彩りながら、尺八を学ぶ楽しさを教えていただきました。
そして、名誉ある権号をいただきながらも、
決して驕ることなく、謙虚で温かく、私達にお稽古をつけてくれました。
先生の教えを胸に、これからも精進して参ります。
ありがとうございました。」
皆様からのお言葉をお伝えさせていただきました。

誓う約束はいつまでも胸の奥へ。
ここに紡がれていく命の継承。
心安らかに我らの行く末を見守り給え・・・。

本当に皆様から慕われた人。という印象のお式でした。
本当の苦労人は、人に愛情をもって接するということを聞いたことがあります。
故人に会ったことはありませんが、門徒さんが口々にお人柄やお稽古のご様子を聞いていると、故人の優しさが伝わってきました。
人生に何を遺すか・・・。あの世に何を持っていけるか・・・。
生きるのにお金は必要だけど、持っていけるのは遺徳だけですね・・・・。
精進します。

 

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